大阪で病いだおれる

ひどいめにあった。

[初日]
いきなり娘吐く。
下痢症状はないので興奮と軽い風邪だろうと判断し、観光はキャンセルしてホテルでおとなしくする。ホテル内レストランに行くのもしんどいと言うので、食事はテイクアウトのお惣菜などを並べて缶ビール。これはこれで一家逃避行のようでちと楽しい。DSライトにカセットを入れてくるのを忘れた。大馬鹿。膨大な空き時間をもてあます。唯一の救いはホテルの部屋が最上階温泉びきでトリプルベッドにしてもあまり窮屈でない広さだったこと。監獄のようなビジネスホテルにしなくてよかった。

[2日目]
娘、嘔吐はおさまったものの外出はつらいという。ルームクリーニング中にホテル下のカフェで少しお茶を飲んだだけでも具合が悪そうだったので今日も予定はキャンセル。ホテル近辺の本屋で物色するもめぼしいものがなく、夫と交互にホテル内スパに入ったりしてぼんやり過ごす。私はアカスリマッサージもしてもらいツルツルスベスベになる。これはこれで有閑マダムのようでよろしい。娘にもおばちゃんに教わったマッサージを長時間施してやり、スキンシップもばっちり。娘の症状はかなり回復したものの今晩もテイクアウトごはんにビール。

[3日目]
夜中、いやな夢を見つつ目覚める。吐き気がする。娘の風邪がうつったか?と思う間もなくトイレ往復開始。嘔吐だけでなく下にもきた。ほぼ時を同じくして夫もトイレを往復しはじめる。これは娘からうつったんじゃない! やられた。時間的にも食中毒だ。間違いない。気持ち悪い。腹が痛い。白和えかお好み焼か。
明け方過ぎても二人の交互トイレは続く。ベッドに戻る体力もなくバスルームの前に行きだおれて、トイレに来た夫に起こされたりする。目を覚ました娘は元気回復しているようで、それだけが救い。上も下ももう出るものがない。とりあえず水分だけは補給する。補給しては出す。あまりの辛さにとうとう近くの診療所に駆け込み、夫婦揃って釣り上げられたマグロのようになって点滴を受ける。
明らかに食中毒症状なのだが「食中毒」と診断すると保健所への報告なんかがあって面倒なのだろう、医者は「食中毒…かな…んー」と煮え切らない。まあどうでもいい。この苦しさをなんとかしてくれれば。
点滴で100の痛みは80におさまる。診療所からホテルに荷物を取りに戻り、すぐ帰宅することに。しかし、ホテルから徒歩1分の駅にたどりつけずベンチに座り込む始末。こりゃイカンもう1泊しようとホテルに戻りかけると、2時間の点滴中静かに静かに待っていた娘が「帰りたい」と泣き出す。そうだよなぁ、帰りたいよなぁ、ということで帰宅強行。
なんとか新幹線の席についたが、リクライニング最大にしても座席でとれる姿勢はたかがしれており、どうにもこうにもしんどい。ヒジ掛けにヒザをかけて丸まってみたりするが全然だめ。これじゃ東京までもたない。どうしよう。通路に寝ちゃだめかな。売り子のお姉ちゃんが困るよね。座席の足元なら横になってもイイかな。自分の席ならいいよね。そうだここに寝よう。
耐えきれないムカつきと鋭い痛みから、そんな最後の手段に出ようと思った私の目に入ったのは車内案内図の「多目的室」説明。授乳や着替えに加え「気分のすぐれないお客様」が使えるようなことが書いてあるではないか。いいんだな! 気分がすぐれなかったら使ってもいいんだな! 思わず英文説明までじっくり読んで、通りかかったアテンダントのお姉さんに申し出る。「ずびばぜん、たいへん具合が悪いんですが多目的室って横になれますか…」
そして案内された「多目的室」。シートをフラットにしてもらってすぐ横になる。ああああ、すこし楽。「名古屋で降りますか」と車掌さんに聞かれたけど(いやむしろ降りてほしいよね、こんな客。でも名古屋で降ろされても困ります…)これなら東京まで乗り切れそう。ありがとう「多目的室」。ありがとう「のぞみ」。ビバJR東海*1
そんなこんなでなんとかかんとかホウホウノテイで帰宅。ああ、やっぱり我が家が一番ね。すぐ娘だけ実家に引き取ってもらい、二人で崩れこむように寝る。

[帰宅翌日]
まだ回復せず。夫欠勤。おかゆ食べはじめる。ひたすら横になる。足腰の弱った老婆のような姿でウロウロする。

[帰宅翌々日(今日)]
ようやくムカつきとれる。夫出勤。娘も始業式。ああ健康って素晴らしい。でもまだおかゆ


そんなわけで、ホテル徒歩圏内(というか本屋と診療所以外はずっとホテル)から出ることもなく名物もろくに食わず桜も見ず土産も買わずただ行って帰ってきただけという前代未聞のひどい旅行でした。しくしく。死ぬかと思った。東南アジアでもネパールでも旅先で体調を崩したことがない私が、まさかこんな大都市でアたるとは…。当分大阪には行けません。
せっかくアカスリしてツルツルになったのに、それ以来風呂に入っていないので今とても自分が臭いです。

*1:帰宅後調べたら多目的室は予約制だそうだ。よかったー予約入ってなくて。ありがとう他の乗客の皆さん。ちなみに多目的室に入ったのは私だけ。